猫を飼っていると、猫が日常的に嘔吐することに気が付くと思います。
猫はもともと獲物を丸呑みし、消化できないものを吐き出す習性があったり、胸やけした時に余分な胃酸を吐き出すために草を食べて吐くことがあります。
猫が嘔吐するのは、心配する行為ではありません。
しかし、嘔吐の頻度や吐しゃ物の内容によっては病気の前兆である可能性があります。
猫が嘔吐した時どういったポイントをチェックしておけば慌てずに対処できるのかをわかっている事は大切です。
今回は猫が嘔吐する理由と対処法についてご紹介します。
猫が嘔吐する理由1: 毛玉の不快感
猫が嘔吐した時、吐しゃ物が毛玉で、吐いた後も元気な様子であれば特に心配する必要はありません。
猫が毛玉を嘔吐するという行為は、自分の体を健康に保つための自然な行為なのです。
毛玉の吐き戻し
猫が吐く前に、ゲエゲエというせき込んだような大きな音を出すことがあります。
これは、猫が毛玉を吐く時によくみられる様子です。
猫は自分の被毛を舐めてきれいにするグルーミングという行為をします。
これは、体温調節や、皮膚病から身を守ったり、体を清潔に保つための行為で、1日のうち3分の1は毛づくりをしていると言われています。
猫の舌はザラザラしているので、グルーミングをしていると舌についた被毛を飲み込んでしまうのです。
飲み込んでしまった被毛は、腸管をとおり便と一緒に排出されるのですが、胃や食道に残ってしまう被毛もあります。
胃や食道にある被毛は消化されません。
これを体外に排出するために猫は嘔吐をするのです。
毛玉を嘔吐する様子は、特に換毛期に多く起こります。
嘔吐する頻度が1〜2週間に1度であれば、生理現象ととらえて心配する必要はありません。
注意が必要な毛玉の吐き戻し
毛玉の吐き戻しは生理現象であるとしても、あまりに頻度が多かったり、吐く毛玉の量が多いといったことがある場合は、少し注意が必要です。
猫のグルーミングにはストレス解消のリラックス効果があります。
ストレスが多い時、人間の爪かじりや指しゃぶりのようにグルーミングが増えることがあり、それにより毛玉を嘔吐する頻度や量が増えることがあります。
アレルギーやノミで皮膚にかゆみがあって舐め続けてしまったり、お腹の痛みからお腹周りを舐め続けてしまったり、精神的なストレスから同じ場所を舐め続けてはげてしまうということもあります。
これにより多くの毛を飲み込んでしまい、飲み込んだ被毛を吐き出すため頻繁に嘔吐するようになります。
ひどくなると、毛玉が腸に詰まってしまうこともあるので、過剰にグルーミングする様子がみられたり、何度も嘔吐する時は、早めに病院を受診しましょう。
毛玉の吐き戻しのケア
猫が被毛を飲み込む量を減らすためには、定期的にブラッシングをしてあげることが効果的です。
特に換毛期には抜け毛が増えるのでブラッシングを丁寧にしてあげましょう。
ブラッシングによりグルーミングが減るということはありませんが、飲み込んでしまう被毛の量を減らすことができます。
猫が嘔吐する理由2: 食事への反応
猫の胃は高い運動能力を保つため、小さくなっています。
そのうえ、猫は食べ物を丸呑みしてしまうことが多く、胃の許容量を超えた食べ物は吐き戻す傾向があります。
食欲旺盛な猫やお腹がすきすぎて急にたくさん食べてしまった場合、嘔吐してしまうことがあります。
ドライフードが食道に引っかかり、未消化のまま吐いてしまったり、慌てて一気に食べたドライフードが胃の中で水分を吸収しふやけ、膨張したことで胃を圧迫し、嘔吐してしまうのです。
こうした場合での嘔吐は、嘔吐した後も元気な様子がみられ、特に心配する必要はありません。
キャットフードには粒の大きさ、硬さ、成分に違いがあります。
年齢に応じた分量を超えた食事を与えてしまったり、猫と相性があまりよくないキャットフードを与えてしまうと嘔吐してしまうこともあります。
早食いを防ぐ対策
猫がお腹を空かせすぎてしまうことを防ぐために、小分けにして食事の回数を増やすという方法があります。
また、多頭飼いで他の猫に食事をとられまいとがっついてしまう猫は、他の猫と離れた場所で食べられるよう環境を整えてあげると安心して落ち着いて食べられるようになります。
もともと早食い気味の猫には、キャットフードの粒が大きめのものに変えてみたり、いろいろな形、大きさのキャットフードを混ぜるようにすると、飲み込むまでに噛まなければいけなくなるので、食べるスピードを少し遅くすることができます。
猫が嘔吐する理由3: 内臓等の疾患
猫が嘔吐し、熱、下痢、などの症状も特になく元気な時は、まずは様子を見るようにしましょう。
元気であれば特に心配する必要はありません。
しかし1日に何度も繰り返し吐く場合、消化器系の病気や異物の誤飲などが考えられます。
慢性的に嘔吐や下痢を繰り返している時は炎症性腸炎という病気の可能性もあるので、早めに病院を受診するようにしましょう。
黄色い嘔吐物の場合
黄色い液体を吐いた時は、腸に流れるはずの胆汁が胃に逆流し、胆汁を吐いていることがあります。
胆汁を吐いている場合は、食事を小分けにし、空腹な時間をなるべく作らないようにすることが大切です。
万が一胆汁ではなく胃液を吐いていた場合、この対処は逆効果になってしまいます。病院を受診し判断を仰ぐようにしましょう。
血液混じりの嘔吐物の場合
黒っぽい茶色の血液が混ざった吐しゃ物を嘔吐した場合、呼吸器系、胃や腸など内臓で出血したものを吐いている可能性があります。
鮮血の場合、口腔内、咽頭部、食道内での出血の可能性があります。
嘔吐と食欲不振、それによる体重減少、多飲多尿といった症状が現れた時は腎不全が考えられます。
猫の腎不全は、6歳を超えると症例数が急増する傾向にあります。
半年に1回くらいは定期健診を受け、予防に努めましょう。
他に、食物アレルギー、中毒、寄生虫の感染、熱中症、ストレスなどで吐くことがあります。
猫が嘔吐した時の対処法
猫が嘔吐した場合、ポイントは猫の様子と吐しゃ物の観察です。
嘔吐したものが毛玉や草、透明な胃液などで、嘔吐した頻度も1~2回程度で、嘔吐した後の猫の様子が通常どおり元気であれば、生理現象としての嘔吐と考えられ、緊急で病院を受診する必要はありません。
吐しゃ物に血が混ざっている、異臭、異物が混ざっているなどで、猫がぐったりした様子であったり、下痢、発熱、食欲不振、便秘など、いつもと違う様子がみられた時には、早めに病院を受診しましょう。
受診の際は、
- 嘔吐の頻度
- 嘔吐した内容物を持参する
- 内容物の写真を持参する
など、できるだけ詳しい情報を準備して病院へいくとより正確な診断を受けることができます。
猫が嘔吐した時は落ち着いて対処を
猫にとって嘔吐自体は生理現象の1つでもあるので、飼い主は、嘔吐に驚いたり慌てたりする必要はありません。
しかし、安心ばかりしていると大きな病気の兆候を見逃してしまう可能性もあるので、猫の観察を怠らないようにしましょう。
少しでも様子がおかしい場合は、躊躇せず病院を受診することが大切です。
猫にとって嘔吐することは、自然なことであるとしても、猫の体には負担がかかる行為です。
飼い主が落ち着いて対処することで、猫も安心し、ゆっくりと体を休めることができます。