腎不全は猫に多い病気で、特に老齢の猫ではおよそ3分の1が患っているともいわれています。
そのため、ケアに苦心している飼い主さんも少なくないでしょう。
特に困るのが、腎不全の猫がなかなかご飯を食べてくれないことではないでしょうか。
食事は体力維持に欠かせないものなので、なんとかうまい方法を見つけたいものです。
そこでここでは猫の腎不全とはどういうものか、その原因や症状について解説し、さらに腎不全の猫がご飯を食べないときの対処法や、様々な治療法についても紹介します。
猫の腎不全の症状
腎不全とは腎臓がうまく働かない状態のことをいいます。
腎臓は血液から尿を作る器官ですが、その際に体内の老廃物や毒素を排出したり、血圧や血中のイオンバランスを保つなどの重要な働きをします。
腎不全になるとこうした機能が正常に働かなくなるため、様々な弊害が起こり、それが症状として現れるのです。
猫の腎不全では、初期の段階ではまず尿の量が増えます。
これは腎臓で水分の再吸収が十分に行われなくなるためです。
尿の色は薄く、匂いもあまりないのが特徴です。たくさん尿が出るため、それを補おうとして水を飲む量も増えます。
症状が進むとさらに尿の量が増え、たくさん水を飲んでも水分を補給しきれなくなり、脱水症状を起こします。
脱水症状が進むと、次に起きるのは尿毒症です。
これは老廃物や毒素が腎臓からきちんと排泄できず、体内に残ってしまうために起きるものです。
体内に残った毒素は血液に乗って全身に回るため、口内炎や胃炎といった症状も引き起こし、食欲不振や嘔吐などを起こします。
また、機能低下した腎臓はそれを補うために血流を増やすことで老廃物を排出しようとし、昇圧ホルモンを分泌して腎臓への血流を増やしますが、その結果全身の高血圧を引き起こします。
同時に貧血も起きるため、猫が元気がなくふらふらしていたら注意が必要です。
猫が腎不全でご飯を食べない時の対処法
慢性腎不全では食欲不振がその代表的な症状の一つとなります。
しかし栄養を取らなくては体力が落ち、猫はますます参ってしまいます。
食べたがらない猫にどうやってご飯を食べさせるかは、飼い主さんにとって悩ましいところでしょう。
腎臓病の猫には、普通のフードではなく腎臓に負担を掛けないように処方された専用の療法食を与えます。
ただ、急にフードを変えてしまうと食いつきが悪くなるため、今までのフードに少しずつ混ぜ、段々と療法食の割合を増やしていく、という方法で徐々に慣らすのがおすすめです。
一口に療法食といってもドライフードやウェットフード、あるいはフレーバーの違うものなどいくつか種類があるので、飽きないように数種類揃えておくのも良いでしょう。
一旦慣れたはずの療法食も、食いつきが悪くなることがあります。
そんなときは少し温めて匂いを強くしてみましょう。
猫は人に比べて6倍の嗅覚を持つといわれており、匂いの刺激で食べるようになることがあります。
お湯をかけたり電子レンジで温めるなどして、37~38度ぐらいにして与えましょう。
逆に酸化臭がすると猫は嫌がるので、酸化しやすいドライフードは冷蔵庫や冷凍庫で保管するなどして酸化を防ぐようにします。
その他に、多頭飼いであれば他の猫に邪魔されない場所を確保する、トイレから食事の場所を離すなど落ち着いて食べられる環境を整えることも大切です。
また、基本は市販の療法食がおすすめなのですが、あまりにも食べないときは鶏肉や魚等、猫の好きな食材を使った手作りご飯で気分を変えるのも良いでしょう。
猫の腎不全の原因
腎臓病は猫にとって宿命ともいえる病気で、高齢猫の死因の第1位は腎不全となっているほどです。
ですがその原因ははっきりとはわかっていません。
原因として考えられているのは細菌・ウイルスの感染や免疫疾患などで起こる腎炎が慢性化する、心筋症や血栓といった循環器系の病気で腎臓の血流量が減少する、あるいは尿路結石や腫瘍などで尿の排泄ができなくなる、などといったことです。
また、あまり水を飲まない子の場合は歯肉炎になりやすく、そのことが原因になるとも考えられています。
実は、現在のイエネコの祖先といわれているリビアヤマネコは砂漠で暮らしており、水をあまり飲まなくても生きていけるよう高機能な腎臓を持っていました。
イエネコにもその性質は受け継がれており、腎臓はとてもよく働くのですが、それがかえって腎臓に負担をかける結果となり、高齢猫の腎不全を引き起こしているともいわれています。
その他に腎臓の発育不全や異形成、多発性嚢胞腎といった遺伝性の疾患が原因となることもあります。
腎不全は通常長い年月をかけて進行していくものですが、こうした先天性の疾患がある場合は若くても発症することがあるので注意が必要です。
猫の腎不全の治療法
腎臓の組織は一度損傷すると再生することはありません。
従って、腎不全の治療では残された部分をできる限り大切に守り、病気の進行を遅らせていくのが中心となります。
その治療法は、大きく分けると食事療法と薬物療法の二つです。
食事療法では、腎臓に負担となるタンパク質やリン・ナトリウムなどを避けた食事を与えます。
ビタミンB群やカリウム、可溶性繊維などはむしろ積極的に摂りたいところです。
こうした調整を施したご飯を自作することは難しいので、獣医師と相談して適切な市販の療法食を取り入れるのが良いでしょう。
水をたくさん飲ませることも大切です。
薬物療法は、あくまで症状を緩和し進行を遅らせるために行うものです。
脱水症状や尿毒症のある場合には点滴や皮下注射を行います。
高血圧があれば降圧剤、貧血があれば造血ホルモンを定期的に投与します。
また、吸着剤を投与して毒素を吸着するのも腎臓の負担軽減のためには有効です。
腎臓の残存機能が著しく少ない場合は、老廃物を除去するために血液透析・腹膜透析を行うこともありますが、対応する病院はまだまだ多いとはいえません。
また、まだ臨床段階ですが再生医療による治療も研究が進んでいます。
早期発見が難しい猫の腎不全・食事や治療の知識をしっかり身につけておこう
猫の腎不全は症状が出にくく、目に見える症状が現れたときにはすでに腎機能の3分の2が失われているといいます。
ですが適切なケアを行って残存機能の維持を図れば、病気とうまく付き合いながら長生きすることは可能です。
腎不全のケアでは日々の食事のケアが中心となります。
腎不全の症状で食欲不振となりがちな猫に、どうしたら少しでも栄養を付けてもらえるかは日頃の知識がものを言います。
ぜひここで解説した内容を参考に、適切な食事ケアや治療を行っていきましょう。