家猫の中でも最も数が多く、古くから親しまれてきたのがキジトラの猫です。
言わば家猫のスタンダードとも言えるキジトラですが、他の白猫や黒猫、三毛猫などと比べてどの様な独自性を持っているのでしょうか?
今回は家猫の代表格であるこのキジトラの性格面での特徴や、身体的な特徴から始まり、キジネコが歩んできた歴史やルーツについても解説していきます。
またそうしたキジトラの中でも特に話題になるなどして有名になったキジトラ猫についてもご紹介していきます。
キジトラの身体的特徴は?
キジトラは海外の猫種と比べると全体的に丸みを帯びたシルエットをしていることが特徴です。
全体的に茶色と黒っぽい色の地に真っ黒な線の模様が虎柄のように入っており、この色合がメスの雉と似ていることから「キジトラ」と呼ばれています。
場合によってはお腹側が僅かに白い毛になっている事もあるようです。
基本的には茶トラやぶち猫、白猫や黒猫、三毛猫などとは毛の柄が違うだけで同じ日本猫という種類になります。
品種としては雑種に当たり、別名和猫などとも呼ばれています。
キジトラの特徴的な柄は実はもっとも祖先に近い毛色でもあります。
猫の大本の祖先であるとされているリビアヤマネコがまさしくやや茶色の強いキジトラ柄であるため、その姿を色濃く残している猫なのです。
キジトラの、海外の猫種にはない特徴として大きな物に尻尾が挙げられます。
キジトラはしっぽのタイプにも種類があり、根本から3~4cmほどしかない短い尻尾のキジトラは、
海外の猫種に見られない特徴として非常に人気が高く「ジャパニーズボブテイル」として珍重されています。
他にも尻尾が途中から直角に折れている「かぎしっぽ」も、海外では非常に珍しいものですが、日本のキジトラでは比較的多く見られるため特徴の一つと言えます。
キジトラの性格は?
キジトラの性格として特に強く現れているのが「警戒心の強さ」です。
その見た目が祖先であるリビアヤマネコに最も近いことも関係してか、キジトラはかなり野性的で、野良猫としての適性が高い警戒心の強い性格をしている子が多いようです。
大変良く動き回ることでも知られており、テリトリーと思わしきエリアを頻繁に練り歩いて、なにか危険はないかとパトロールすることを日課にしている猫が多いんだとか。
猫の中でも特に玩具で遊ぶのが大好きなのは、玩具を追いかける遊びが狩りの予行練習だからこそ、野性味を強く残すキジトラの性格にマッチしているからかもしれません。
また一方でキジトラは群れの仲間をとても大切にする側面も見られます。
小さな頃から家に迎え入れて育ててあげれば、甘えん坊に育つことも多く、いつも体を擦り付けてスキンシップを取ってくれる性格に育つ事も多々あります。
育て方によって自立した野性味あふれる性格と、甘えん坊で野生を失った性格という対局に位置する様な性格になるため、飼い主がどのように接してきたかが非常に大きく出る猫だとも言えるでしょう。
そのため元野良猫などはかなりなつきにくく、キジトラの保護猫を受け入れる予定である場合はそれなりの覚悟が必要となるでしょう。
キジトラの歴史
キジトラは家猫全体の祖先であるリビアヤマネコに最も近い姿を残しており、言わばキジトラの歴史はそのまま家猫の歴史であるとも言えます。
日本における家猫の最古の痕跡は弥生時代と見られるカラカミ遺跡から出土した猫の遺骨であり、紀元前からキジトラが存在した可能性を伺わせています。
のち寛平元年に宇多天皇が書き残した日記である「寛平御記」には、父である光孝天皇から譲られた猫の飼育に関する記述が残されており、これが文字の記録に寄る最古の記録と言えるでしょう。
宇多天皇が譲り受けた猫は黒猫でしたが、先述の理由から同時期にキジトラが居た可能性は濃厚です。
またこの寛平御記での猫に関する描写には、「話しかけると猫が返事をしたそうに、でも喋れず口惜しいような顔をする」などかなり親バカのようにも取れる描写があり、この頃から人が猫に強い愛情を感じていたことがわかります。
また姿かたちを書き残した絵画としての記録は平安時代末期の絵巻「信貴山縁起絵巻」とされており、この中にはぶち猫などの他、キジトラの姿も確認することができます。
猫の記録が出始めた時点ですでに猫は人にとって愛玩の側面が強く出ており、特に部屋に籠もる時間が長い職業である遊女などに人気の高いペットだったようです。
それに加えてネズミや害虫駆除にも役立っており、キジトラは特に野性味が強く狩猟本能が強かったことから、とても活躍し重用されてきたようです。
また日本猫は近年ジャパニーズボブテイルなどの人気もあり海外にも多く輸出されたため、和猫のキジトラを海外で見ることも多くなってきています。
有名なキジトラは?
猫の高い運動能力は広く知られていますが、中でもその面で非常に有名になったのが「エミリー」です。
エミリーはアメリカのウィスコンシン州アップルトンのとある家で飼われていたキジトラの雌猫ですが、2005年9月末に自宅から飛び出したきり行方がわからなくなってしまいました。
しかしなんとその1ヶ月後、遠く離れたフランスのナンシーにあるラミネート加工会社で発見されることになり、通常では考えられないほどの長距離を一人で冒険した猫になったのです。
家を飛び出した直後のエミリーは迷子になっており、混乱したまま近所にある配送センターのコンテナ内に潜り込みますが、
そのコンテナはエミリーを乗せたまま貨物船に運ばれてしまいます。
エミリーはそのまま貨物船で大西洋を渡りフランスに到着。
貨物が受取先に送られる際に従業員がそこにいたエミリーを発見し、首輪と名札から飼い猫であることを察したその従業員によって無事保護され、後に自宅へと帰還することができました。
発見された際のエミリーは輸送中食べ物がなかったせいかかなり痩せて衰弱していたようで、
発見が遅れたら命はなかった可能性もあり、まさに九死に一生を得た奇跡の猫として大きく話題になりました。
キジトラは祖先の姿を色濃く残す家猫の代表格
キジトラは祖先のリビアヤマネコの姿を最も色濃く受け継いだ猫です。
三毛猫や黒や白猫などに派生する前の、白・茶・黒が混ざった毛色をしており、カムフラージュに優れた柄です。
性格面も野性味の強さがありますが、反面人と長く共生してきたためか、小さい頃から一緒に暮らせば甘えん坊の子に育ちやすい特徴があります。
柔らかくフワフワとした毛並み、野性的でたくましい反面甘えん坊で仲間思いでも有るキジトラは、日本の家猫の中でも特に馴染み深く人気も高い猫と言えるでしょう。