猫を新しく飼う方、既に飼い主の方、キャットフードについて考えたことはありますか?
実は、猫の寿命の8割が「ごはん」で決まるとも言われているんです。
これから飼う猫ちゃんにも、今飼われている猫ちゃんにも、長生きして欲しい・・・
この記事では、大切な猫ちゃんのご飯であるキャットフードを「動物栄養学」の観点で、本当にいいフードとは?失敗しない選び方とNGな選び方とは?といった疑問を全て解説。
猫ちゃんの健康の為に、キャットフードの知識や選び方を、基礎からおさらいしましょう。
要点
- 総合栄養食に準拠したフードを選ぶ
- 猫のライフステージにあった食事を与える
- 選び方を間違えると病気や生活習慣病にかかるリスクがある
- 価格や食いつきだけで選ばない
キャットフード選びに必要な「猫の栄養学」を理解しよう!
まず最初に、キャットフード選びの基礎「栄養学」を簡単に説明します。
猫の健康にとって一番大切なことは「栄養バランスが取れていること」です。
体に良いと野菜ばかりあげることも、食いつきがいいとお肉ばかりあげることも、栄養バランスは偏ってしまいます。
人と同様に偏った生活を続けていると、体調不良や大きな病気の原因となる可能性も大いにあります。
これらを防ぐため、下の4つの栄養学の基本知識が必要です。
- 給餌量の計算方法
- 6大栄養素
- 消化と吸収量
- 添加物について
大切な家族である猫ちゃんのため、これらの知識を一緒に学んでいきましょう!
① 給餌量の計算方法
上記の図を詳しく説明します。
給餌量を出すための計算式は 給餌量(g)=DER÷ペットフードの代謝エネルギー(kcal/100g)×100
この計算式では、DER(1日に必要なエネルギー量)を最初に求める必要があります。
DERの求め方は2種類あります。理解すると簡単なので、一緒にゆっくり計算していきましょう!
【1日あたりのエネルギー要求量(DER)の求め方①】
正確に計算したい時は、安静時エネルギー要求量(RER)×係数
という計算式で求めます。この計算方法では、さらにRERと係数が必要なので、それぞれの求め方と数字を説明します。
まず、RER(安静時に必要なエネルギー量)とは、普通の日常生活で活動量がほとんどない状態の時に必要なエネルギー量のことで、30×体重(kg)+70 で求められます。
次に係数ですが、こちらは猫の体調によって大まかに選んでください。
- 去勢/避妊済み:1.0-1.1
- 未去勢/未避妊:1.2
- 肥満傾向:1.1
- 減量:0.8
- 安静:0.8
- 成長:1.6-3.0
- 高齢:0.8-1.1
例えば、体重3kgの去勢済み猫のDERを求めてみると
30×4kg+70=190(安静時エネルギー)×1.0(係数) = 190kcal(DER)と求めます。
【1日あたりのエネルギー要求量(DER)の求め方②】
①だと難しい、、と思った方!実は簡易にDERを求めることができます。
活動量×体重(kg) これだけです。
活動量はその日の猫の活動量から下記の数字を選ぶだけです!簡単!
- 多い 70kcal/日
- 普通 60kcal/日
- 少ない 50kcal/日
以上2つの方法から1日あたりのDERがを計算したら、最初に説明した給餌量を出してみましょう。
DER÷ペットフードの代謝エネルギー(kcal/100g)×100 = 給餌量(g)
例えば、DERが160で、ペットフードの代謝エネルギーが400だった場合、
190÷360×100=52.7 と計算されます。つまり、この猫には1日あたり52.7gのごはんを与えなければなりません。
難しい!と投げ出さず、大切な猫ちゃんの健康を守る為に一度必要なごはんの量を計算してみましょう!
② 6大栄養素
猫の健やかな成長を支えるために必要な知識である6大栄養素。
「人間と猫に必要な栄養素は一緒でしょ?」と思われる方・・・実は全然違います!!!
「人間の体にいいから」と人と同じレシピのものを与え続けると、猫に必要な栄養素の摂取が疎かになり、長期的に見ると危険な健康状態を作りかねないという恐ろしい話になってしまうのです。
恐ろしい事態を避けるため、猫に本当に必要な6つの栄養素を知っていきましょう!
1.水
「水」は最も大切な栄養素で、体重の約60%を占めており、体温のコントロール・栄養素などを体内で運搬する役割・血液や体液、リンパ液の主成分など、10%ほどの脱水が発生するだけで死に至ることもあります。
そのため、必要な水分量を知り、こまめに補充してあげる必要があります。
水分の摂取は、主に食事に含まれる水分・「飲料水」・代謝水(栄養素が分解されて水分になったもの)の3つに分けられ、代謝水は必要な水分量の5-10%程度しかカバーできないため、食事や飲料水からの摂取が非常に重要になります。
猫は自発的に水分を取ろうとしない傾向があり、尿が濃縮しやすく、水分をあまりとらない冬場などは尿結石を引き起こすリスクが高くなり要注意です。
さらに、猫は喉の渇きをあまり覚えないため、飼い主さんは摂取している水分量や与えている量を把握しておくことが好ましいです。
【水分摂取量の目安】
先ほど計算した1日あたりのエネルギー要求量(DER)に、ミリリットル(ml)をつけた数字が大まかな水分摂取量の目安です。
DERが400の猫ちゃんに対しては,
- 主食がドライフード場合:水分摂取量は約420ml
- 主食が缶詰:水分摂取量は85ml(缶詰には水分が多く含まれているため)
を与えるようにしましょう
フードを選ぶ際にも、ご自身の生活スタイルや猫ちゃんとの相性も勘案した上で、フードの水分量を調整することをお勧めします。
2. 炭水化物
生物の基本的なエネルギー源として、炭水化物は大切な存在です。
炭水化物は「糖質」と「食物繊維」2つに大きく分けることができ、「糖質」はエネルギー源、「食物繊維」は腸などの内臓の健康に良い影響を与えるとされています。
さらに食物繊維も「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」と大きく分けられます。
水溶性の食物繊維は満腹感を与え、血糖値のコントロールに役立てられます。
一方、不溶性の食物繊維は腸などの消化器官の運動を刺激し、排便の促進や有害物質の排泄等に役立てられます。
基本的にはどのキャットフードにも適切な量の炭水化物は含まれていますが、目的に応じて繊維源に変化を持たせている場合があり、便秘気味や腸管に負担をかけたくないなど、猫ちゃんの体調に応じて使われている食物繊維を見比べることが重要です。
3.タンパク質
身体を作るのに必要な栄養素で、猫は犬よりも多くのタンパク質が必要です。
タンパク質は大きく分けると肉や魚、乳製品に含まれる動物性タンパク質・大豆や穀物に含まれる植物性タンパク質の2つに分けられます。
タンパク質は非常に多くの機能を持つ栄養素です。
体内に取り込まれると、アミノ酸に分解され、筋肉などの各組織や血液、酵素、免疫抗体を作る成分になります。
また、アミノ酸に含まれるタウリンは体の状態を一定に維持できるように調節するさせる働きがあります。
人間などの哺乳類は、体内でタウリンを合成することができます
猫は体内で合成するタウリンが非常に少なく、食事で補う必要があります。
十分なタウリンが摂取できないと、心筋や網膜の疾患、胎児への悪影響も考えられます。
タウリンは肉や魚、卵などの動物性タンパク質にのみ存在する成分なので、注意しましょう。
さらに注意してほしいことが1つ!タンパク質は分解の過程で、有毒物質であるアンモニアが発生します。
アンモニアは肝臓を通じて解毒処理をされますが、猫はその解毒機能が不十分の為、食事中に高アンモニア血症を生じて死に至る場合もあります。
ライフステージや健康状態に応じて、適切なタンパク質のバランスが重要になります。
4.脂質
食事から得られる脂質は、中性脂肪が多いことから「脂肪」と呼ばれます。
「脂肪」と聞くと良いイメージを持たれない方も多いかもしれませんが、どのような役割を担っているのでしょうか?
実は、非常に効率の良いエネルギー源で、体温調節・ホルモンや胆汁の合成などの生理機能を整えるために必要不可欠な機能を持っています。
脂質は主に「動物性油脂」と「植物性油脂」の2つに分けることができます。
皮膚や被毛の健康機能の維持に必要な必須脂肪酸の中には、猫の体内で合成できない物質(アラキドン酸)もあります。
これらの維持のためにも、日々の食事で健康バランスを常に考えておくことが大切です。
5.ビタミン
ビタミンとは、生理機能の調整を行う化合物です。
皆さんも一度は「ビタミン剤」を飲んだ経験があるのではないでしょうか。
人間は体内合成ができず、食事やサプリメントから摂取するしか方法はありません。
しかし、猫は体内でビタミンCを合成でき、猫にサプリメント等を通じてビタミンCを過剰摂取してしまうと、シュウ酸カルシウム尿石症を引き起こす可能性があります。
また、代謝や成長を促すビタミンB系は腸内で合成されるため、抗菌薬を使用したり、腸内環境が悪い場合は十分なビタミンB系合成ができないこともあります。
ビタミンの過不足は飼い主や猫自身も気づくことが難しく、長期的に見ると体調不良や病気になったりと、悪い影響が徐々に現れてきます。
日々の食事で栄養バランスを考え、足りない要素はサプリメントなどで補充していくことを心がけましょう。
日々の食事で摂ることができる、代表的なビタミンをまとめたのが以下になります。
引用:一般社団法人Jミルクhttps://www.j-milk.jp/knowledge/nutrition/berohe000000e9so.html
6.ミネラル
ミネラルは骨や歯などの硬組織や神経の伝達などの生理機能を調整する役割を担います。
「カルシウム」は皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
カルシウムはまさに骨や歯の形成や神経の健康を担う重要なミネラルの1つ。
ミネラルの過不足は様々な弊害をもたらします。例えば、「亜鉛」の効果をみてみましょう。
亜鉛は主に牛の肝臓や赤身肉、乳製品に含まれているミネラルで、皮膚の健康や免疫機能の向上に役立ちます。
一方、不足してしまうと食欲不振をもたらしたり、脱毛、角化症の原因になります。
質の良いキャットフードではミネラルは十分に含まれていますが、不足しそうな時はサプリメントで補う必要があります。
ネコに必要なミネラル分の表
・主要ミネラル
ナトリウム |
神経伝達に関与。血液の浸透圧の維持に必須。 |
カリウム |
ナトリウムとともに血液の浸透圧維持に関与。心臓や筋肉の機能調節など。 |
リン |
骨や歯の形成、糖代謝によるエネルギー生産に関与。DNAの必須元素。 |
カルシウム |
骨や歯の形成、神経伝達に関与。 |
マグネシウム |
骨の形成、身体中の代謝を促す酵素反応に必須の元素。 |
・微量ミネラル
鉄 |
赤血球(ヘモグロビン)や筋肉(ミオグロビン)の必須成分。 |
亜鉛 |
たんぱく質の合成、細胞分裂を促進。 |
銅 |
ヘモグロビン、コラーゲンなどの合成に関与。一部の酵素反応を促進。 |
ヨウ素 |
甲状腺ホルモンの成分で、発育、基礎代謝を促進。 |
セレン |
抗酸化作用を持つ。体内の過酸化脂質を低減し、老化を防ぐ。 |
③ 消化と吸収量
次に、食べた栄養素を体内に吸収しなければなりません。この分解・吸収をする器官が消化器官です。
口から入った食べ物は、食道、胃、小腸、大腸を通って便として排泄される流れは、人間も猫も共通していますが、異なる点がいくつかあります。
例えば、人は食べ物をよく噛み唾液が出ることで消化が始まりますが、猫は食べ物をすぐに飲み込んでしまうため、唾液が消化の役割を果たすことはありません。
この理由は、猫の歯は草食動物のように、口に入れたものを「すり潰す動作」ができないような顎の作りだからです。
また、胃の許容量にも大きな違いがあります。人が約1.3Lであるのに対し、猫は約0.3Lしかありません。
そして、人や犬の胃は「拡張性」があるため一度の食事でより多くの量を食べることができますが、猫はもともと小さな獲物を1日に何度も狩って食べる食性があるため、胃の拡張性が低いことが特徴です。
④ 食性
実際にキャットフードを選ぶ際にも参考になる猫の「食性」と「嗜好性」について解説します。
まず、食性についてです。
犬猫に共通する大きな特徴として、最初に消化される栄養素が「タンパク質」であることが挙げられます。
一方で、人は炭水化物を最初に消化するため、人にとっては炭水化物が中心・犬や猫はタンパク質が中心とした栄養バランスが適しているという食性をもっているのです。
次に、どのような食べ物を好むかという嗜好性です。
嗜好性は匂いや味、食感によって決まるとされています。
肉食である犬や猫がもっとも好む匂いは「脂肪臭」だとされています。
しかし、猫の場合は犬に比べて嗅覚細胞の数が少ないため、舌で食べ物を確認する傾向があるようです。
つまり、乾燥したものよりも水分を多く含んだもの・冷たいものよりもあったかいものが好ましいです。
また、味覚を感じる「味蕾」と呼ばれる組織の数は人間>犬>猫の順で少なく、猫は「うま味」や「酸味」を好むとされています。
これらは、肉や魚に多く含まれているグルタミン酸などのアミノ酸に由来する味です。
一方で、甘みや苦味は猫にとって不向きなので、避けることが無難です。
しかし、最終的な嗜好性は「経験」によって決まるため、日常の食生活が非常に重要になってくると言えます。
⑤ 添加物について
皆さんは添加物と聞いてどのようなことを思い浮かべますか?
「体に悪そう」「あまり良いイメージはない…」「怖いから出来るだけ無添加の食材を買うことを意識してる」
と考えられる方も多いのではないでしょうか。確かに、人間と猫の体に悪いものもあります。
では、なぜ添加物が使用されるのか。その理由は、キャットフードの品質保持や、安全性を守ったり、猫の体内で合成できない栄養素を供給するために不可欠なものがあるからです。
添加物は体にとって危険だと思われがちですが、少し誤解が含まれています。
そもそも、体に危険を及ぼすものは添加物として認められません。
しかし、化学添加物は使用量が多すぎる場合、身体への害があるとされ使用量が制限されているものがあります。
その使用量が制限されている化学添加物の一例をご紹介します。
・プロピレングリコール
保湿作用や菌をコントロールする作用があります。
猫が摂取すると赤血球に影響が見られることから、キャットフードに使用することは禁止されています。
人や犬に対しては害が認められていないため、ドッグフードへの使用については問題がないとされています。
・BHA(ブチルヒドロキシアニソール)
人向けのの食品の指定添加物の1つとされており、化粧品などにも使用されている添加物です。
国のペットフードに関する規制を定めた「ペットフード安全法」で規定されている使用基準は、エトキシキン・BHA・BHTの総量で150μg/g以下とされています。
・BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)
人向けの食品の指定添加物の1つ。
「ペットフード安全法」で規定されている使用基準は、エトキシキン・BHA・BHTの総量で150μg/g以下とされています。
・亜硝酸ナトリウム
ペットフードの缶詰やスナック類の保存料、発色剤として使用されている添加物です。
「ペットフード安全法」で使用基準が定められています。
上記化学添加物はキャットフードへの使用が禁止されています。
また、これら以外にも、自然由来の添加物も存在し、一見安心に見えますが、自然由来の添加物「アカネ色素」が平成16年に発がん性が認められたことなど、一概に「自然由来なら安全」と言い切ることは難しいことが現状です。
キャットフードの選び方や与え方を間違えると起こる問題
まず、不適切なキャットフードがなぜ病気をもたらすのでしょうか。
その原因は、主に「必要な栄養素を考えない間違えた与え方」です。猫のライフステージに合わせて適切な栄養素を考え、要求されているエネルギー量に応えなくてはなりません。
例えば、猫の栄養素を考えずに、飼い主が「自分が食べた残りをあげていた」場合はどうなるのでしょうか。
上の栄養素でも説明した通り、猫と人間では必要とされる栄養バランスが全く違います。
人間の主要なエネルギー源が「炭水化物」であるのに対し、猫は「タンパク質」です。炭水化物をメインにしている人間の食事を食事を与えると、糖尿病にも繋がってしまいます。
それでは、不適切なキャットフードが起こす代表的な病気や問題を紹介します。
① 糖尿病
近年、猫の糖尿病が非常に増加しています。
その背景には、「炭水化物を多量に含むドライフードを食べ始めたから」という説が有力視されており、猫は摂取する炭水化物(糖質)によって、血糖値がどんどん上昇していきます。
普段与えている猫の栄養素をきちんと把握し、バランスを考えてあげることが大切です。
② 癌(ガン)
人間にとっても怖い病気の1つである癌についても注意が必要です。
アメリカの研究では、米犬の47%、猫の32%が癌で死亡したというデータがあります。
癌は「甘み」が大好物。甘み(糖質)によって成長しています。
つまり、炭水化物が癌の栄養源となるため、摂取する炭水化物が少なければ、癌細胞の成長を留めたりすることができます。
このガンを引き起こす炭水化物の摂取をできる限り減らすために、与えているフードの栄養素を分析することが何よりも重要ですが、高炭水化物になりがちなドライフードを少しにして、手作り食や缶詰食などのウェットフード中心の食生活にすることが簡単にできる取り組みの1つです。
③ 尿石病
尿石症とは、膀胱や尿道などの下部尿路に、結晶や結石ができる病気です。
尿中のミネラル成分が凝縮し尿道を閉鎖してしまうことで尿毒症や急性腎不全を引き起こす原因にもなります。
実は、これらの尿石症は「水」と大きな関係があるんです。
さらに、尿石症以外にも猫がかかってしまう病気の半分以上に水分不足が関係しています。この問題は、実はドライフードから来ています。
猫用の代表的なウェットフードである缶詰のみを食べる猫の排尿回数は2-4回ですが、ドライフードのみを食べる猫の排尿回数は、猫の正常な排便回数と同じ1-2回しかありません。
ドライフードのみを食べている猫は常に軽度の脱水ぎみと考えて良いでしょう。
炭水化物が引き起こす問題と同様に、「水」も非常に大事な役割を果たしてくれています。
毎日あげるフードだからこそ、猫の身体のことを何よりも考えた栄養基準が必要です。
そのためにも、「総合栄養食」に準拠したウェットフードを選びましょう!
④ 肥満
猫の不適切な食生活は「病気」に限らず、生活習慣病を引き起こす原因にもなります。
その代表的なものは「肥満」です。
肥満は体脂肪の過剰な蓄積によって引き起こされ、様々な病気の原因になります。
適切な体重の管理は全てのライフステージにおいて欠かせないものです。
その原因を探ってみましょう。
【主な原因① 摂取エネルギーの増加】
過剰にフードを与えたり、おやつを与えてしまうことに限らず、去勢や避妊手術をした後には食欲の増加傾向にあります。
こういった際には注意が必要です。
【主な原因② 消費エネルギーの減少】
運動減少はもちろん、高齢化などによって消費するエネルギーが減少すると、肥満を引き起こす要因になります。
次に肥満のリスクについてお話します。
【肥満が引き起こすリスク① 各種病気の誘発と増悪】
先ほど説明した糖尿病に加えて、心臓病や高脂血症、尿路結石症や関節症など、様々な病気の原因になります。
【肥満が引き起こすリスク② 手術に関するリスクの増大】
肥満になると、麻酔がかかりにくくなったり、手術がしにくくなったりしてしまいます。
また、手術ができたとしても組織修復に時間がかかったりするため注意が必要です。
これらのリスクを抑えるためにも食事管理や生活習慣を正すことが求められます。
まず、「摂取エネルギーを減らし、体脂肪を燃焼すること」が効果的です。
脂肪は、猫にとって効率のいいエネルギー源で嗜好性が高いため、摂取量が増加する傾向があります。
高脂肪食は人間でも同様の通り、肥満の原因となります。
与えているフードやおやつに脂肪分が多い場合には、必須の量をキープした上で食事中の脂肪量を減らしてみましょう。
また、L-カルチニンと呼ばれる成分は体脂肪の燃焼をサポートしてくれます。
キャットフード選びの目的別、参考にしたい考え方
キャットフードを選ぶ際の目的はどちらでしょうか?
- 新しく買い始めた時
- 日々の試行錯誤の中で変えようと思った時
以下で、それぞれの目的別に正しいキャットフードの選び方を紹介します。
① 新しく飼い始めた
新しく猫を飼い始めた時が、まず最初に餌について考えるタイミングだと思います。
ペット屋の店員さんに勧められたものをただ買うのではなく、自分でしっかりと考え、自分の猫にあったフードを選んであげましょう。
新しく猫を飼い始めた方に、
「成長期の食生活や生活習慣はその猫の一生を大きく左右する」
ということをお伝えしたいです。
つまり、幼い頃に間違えた食生活が身についてしまうと、その後の猫の一生に悪い影響を与え続けてしまう可能性があるということです。
よくあるパターンとして、「おやつを与えすぎてしまう」というものがあります。
喜んでくれるし、可愛い我が子のためならといって安易に嗜好性の高いおやつをあげすぎてしまうと、匂いや味の強いものしか食べなくなってしまったり、ワガママな子に育ってしまう危険性があります。
もちろん、コミュニケーションの一環として「おやつ」を使うことは非常に効果的ですが、あくまでも主食であるキャットフードがメインであることをしつけましょう。
では、具体的にどんなフードがいいのでしょうか。
この質問に関しては「総合栄養食」に準拠した「ウェットフード」であることをお勧めします。
先ほども説明した通り、ドライフードには高炭水化物のものが多く、炭水化物から得られる糖質は、取りすぎると糖尿病やガンの元になってしまいます。
ですので、幼い頃から低糖質なものを選び、食事管理から病気の予防に努めましょう。
② 健康に良いフードにしたい
日々の試行錯誤の中で、より健康に配慮したフードに変更したいと思われる方も多くいらっしゃると思います。
そんな方には以下の3点を注意して選ぶようにしましょう。
1.猫用の総合栄養食であるかどうか
毎日主食にするフードは、必ず「総合栄養食」と記載のあるフードを選びましょう。
缶詰やパウチの製品には、パッケージが類似しているものの、総合栄養食でないものが多く売られています。
特に、猫用の製品にこの類似品は多い傾向にあるので、注意が必要です。
総合栄養食でないものを主食として与え続けると、栄養の過不足が発生し、体調を崩したり、偏食の癖がついてフードの変更が困難になってしまいます。
2.使用用途を確認する
次に、使用用途を確認しましょう。
ここでは、ライフステージやどんな栄養素が足りていないのかを検討します。
多くのペットフードには「用途表示」がなされています。
これは猫のライフステージや、ライフスタイルに応じて適切なフードを選ぶ際に非常に参考になります。
室内環境用や体重管理用、対症療法など、様々なテーマの使用目的の製品が販売されています。
必要な栄養構成や機能性成分をチェックしておきましょう。
3.保証分析値を確認する
保証分析値を読むことで、そのフードの栄養構成や栄養特性を知ることができます。
栄養構成を知るには、粗タンパク質、粗脂質、粗繊維、粗灰分、水分含有量をチェックします。
総合栄養食である限りAAFCOの基準を満たしているため、基本的な栄養バランスは取れていますが、そのフードが猫に合うかどうかは、猫のライフステージや生活環境等によって変わります。
個体にあったフードを探すようにしましょう。
キャットフードの選び方はライフステージで変わる!
猫も人間と同様に、幼い時から高齢になるまで、段階に応じて適しているフードが変わってきます。
猫の一生を3つの段階に分け、各々のステージに適したキャットフードについて解説していきます。
① 哺乳期・離乳期・成長期
猫の「成長期間」は生後2-3週齢までの哺乳期、7-8週齢までの離乳期、それ以降成猫になるまでの成長期に分類されます。
身体の基礎を作る大切な時期で、身体機能の維持・組織や細胞の成長を支える必要があり、身体を作るタンパク質や、骨や歯を作るカルシウムやリンなどのミネラルを維持することが求められます。
また、最も栄養を必要とする時期のため、十分な食事管理や給餌方法、住環境まで配慮する必要があります。
正しい給餌を行わない場合、脱水症状や低血糖、低体温などを引き起こす可能性があります。
最初の一年で一生の食性が決まると言われています。
特定のフードやおやつばかりだと、わがままな猫ちゃんになってしまう可能性があります。
様々な餌を与えてその子にあった食性を見つけてあげましょう。
【哺乳期に気をつけること】
親猫がいない場合、市販の猫用ミルクを与えるようにしましょう。
人間が飲む牛乳を子猫に与えると、タンパク質や脂肪が低く栄養不足を起こしてしまいます。
市販の専用ミルクは、栄養バランスが一通りカバーされているのでオススメです。
また、胃の容量が極端に少ないため、一度の給餌で3-10mlを目安に与えるようにしましょう。
【離乳期に気をつけること】
この時期は、母猫の食事に興味を持ち始めるため、少しずつパピーフードを取り入れていきます。
しかし、ミルクに含まれていた栄養素から、肉やデンプンを摂取すると大幅な栄養素の変化が起こるため、消化器症状を起こさないよう注意しながら食事を変えていく必要があります。
浅い皿やシリンジを使用し、等間隔で1日5.6回に分けて与えます。
猫は犬と比較して、離乳に時間がかかると言われており、根気強く行うようにしましょう。
【成長期に気をつけること】
猫はおよそ生後4ヶ月齢で成猫予想体重の50%に到達します。
10ヶ月ごろには成猫とほぼ同等の大きさになります。
しかし、骨や筋肉組織は成長過程なので、12ヶ月齢までは成長期用フードを与えるようにしましょう。
成長期用フードは
- エネルギー量
- タンパク質
- 脂肪
- カルシウム
- リン
などが多く含まれており、身体の基礎を固めてくれます。
また、この時期から少しずつおやつをあげてみましょう。与えすぎはNGですが、コミュニケーションツールとしておやつは非常に有用です。おやつの量はDERの10%以内に収めるようにしましょう。
② 維持期
9ヶ月齢頃になり体重が安定し、給餌量を調整してもムラが出てきたら、成長期用フードから維持期用フードに移行しましょう。
その場合、一番最初に説明したDERを参考にします。
その後、体重が増えた場合は、エネルギー量を10-15%減らすために、係数を0.2減らします。
例えば、RER×1.8で量を決めていた方は、1.6にして経過観察をしてみましょう。
また、この時期には、おやつにも特に注意するようにしましょう。
DERの90%は主食のキャットフードから、残りの10%以下程度をおやつとして与えるぐらいが健康維持にとってバランスの良い食生活であると言えるでしょう。
【エネルギー調整量の目安】
DER(1日あたりのエネルギー要求量)は猫の活動量や筋肉量、性別、ストレス、環境によって日々変化します。
定期的に体重測定をし、与える量を調整することでその子に適したDERを探すことが重要です。
以下の要素を参考に少しずつ調整しましょう。
去勢/避妊治療の後 | 体重が増える傾向にあるため、DERを10%程度減らして経過をみてみましょう。 |
運動量が多い/筋肉量が多い | 10%程度増やしてみて、体重が維持できているか経過観察してみましょう。 |
運動量が少なくて肥満気味 | 程度にあわえてエネルギー量を調節しましょう。10-20%ぐらいが目安の値です。 |
夏から秋にかけて | 外気温が高くなると、体温維持のために必要なエネルギー量が減るため、DERも減少します。
その場合は10-15%程度DERを減らしてみるのが良いでしょう。 また、食欲が旺盛になる秋(10月ごろ)を目安に今度はDERを10%程度増やします。 DERを変化させた後にはしっかり体重測定を行い、バランスが取れているかを確認するようにしましょう。 |
日々の体重測定によって「見える化」することで、その後の調節にも役立ちます。
③ 高齢期
高齢期を「この時期から」と定義することは非常に難しいです。
なぜなら、猫の種類や生活習慣、環境等によって大きく変化するからです。
しかし、「肥満傾向にある動物は寿命が短い傾向にある」や「雑種は純血よりも長生き」であるような傾向はわかりつつあり、1つの指標として平均寿命の75%をすぎたら高齢期に入った目安にする考え方もあります。
現実的には健康であっても感覚機能が衰えたり、眠り時間が多くなったなどの生活面での変化や定期的な健康診断の結果から考察するのが良いでしょう。
ペット向けの食料検査基準等を発表している全米飼料検査官協会(Association of American Feed Control Officials)では、高齢猫に対する特定の栄養基準は提供されていません。
なぜなら、猫によって衰えの速度や病気などが異なるため、高齢猫に向けた特定の栄養基準を提供することがあまり意味のないことであると考えられているからです。
しかし、一般的には高齢になると太りやすかったり、心臓病や関節病、便秘になりやすかったりするなどの傾向があるため、高齢猫向けのフードは低カロリーで高食物繊維な栄養配分の物が多くなっています。
健康であれば年齢だけを理由に高齢猫向けのフードにする必要はないですが、諸機能の低下をサポートする栄養素が豊富なフードなど、より質の高いフードを選ぶことをお勧めします。
キャットフードの種類別のメリット・デメリット
キャットフードは大きく分けて3つのタイプに分かれています。
①ドライフード
②ウェットフード
③手作りフード
それぞれのメリットとデメリットをまとめていきます!
① ドライフード
まず、最もポピュラーなキャットフードであるドライフード。
その名の通り、「ドライ」なので、水分をほとんど含んでいません。
しっかりと密閉して管理することで長期保存が可能であることが特徴です。
猫が食べる時の音から通称「カリカリ」とも呼ばれています。
栄養バランスが良く硬めの食感で、あごを鍛えたり歯石を取り除いたりすることもできます。
ドライフードを与える際は必ず、横にお水を用意するようにしてください。
開封後からは酸化が始まるため、大袋を購入した場合は小分けにして密封保存するなどの注意が必要です。
メリット
- 種類が多く、価格が安い
- 虫歯や歯周病になりにくい
- 総合栄養食として栄養のバランスが取れている
- 一回の給餌量が測りやすいので体重管理がしやすい
- 未開封状態では長期保存が出来る
デメリット
- 水分量が少ないため、別途水分を補給する必要がある
- 飽きやすく、食いつきが悪くなる傾向がある
② ウェットフード
ウェットフードは缶詰やパウチに入ったもので、水分量が75%以上のものをさしています。
水分の摂取は尿石症の予防や体調の維持に不可欠です。
食事と一緒に水分を取ることができることはとても良いことですよね!
スープ仕立てやゼリー仕立て、パテタイプ、フレークタイプなど様々な種類が有り、嗜好性が高いため主にご褒美やおやつ、食欲不振の時に与える餌として最適です。
また、ドライフードと混ぜて与えている方も多いようです。
お湯と混ぜてペースト状にする事で、子猫の離乳食や歯の弱った高齢猫の食事として与えることができます。
また、投薬を嫌がる猫には、薬を包んで食べさせたりもできます。色々な工夫ができることも特徴です。
メリット
- 素材の味が残っているので食いつきが良い
- 低カロリーのものが多い
- 水分含有量が多い
- 軟らかさが猫に適している
- 保存料が使われていない
デメリット
- 価格が高くなる傾向がある
- 歯や口内に食べかすが残りやすく、歯周病や口臭の原因になりやすい
- 開封すると長期保存が出来ない
③ 手作りフード
キャットフードの中身って本当に信頼できるのだろうか…そんな時は手作りでご飯を挙げてみてはいかがでしょうか。
猫の食いつきの良さや、コミュニケーションの一環としてその役割を担ってくれます。
また、お腹が弱い子・アレルギーがある子・市販のキャットフードだと体に合わない子には、キャットフードより手作り食の方が良いと考える飼い主さんが多いです。
また、大切な家族である猫ちゃんも、飼い主さんが作ってくれたフードは何よりも嬉しいのではないでしょうか。
メリット
- 飼い主が自ら材料を選ぶことができるという安心感
- 愛情のこもったご飯を食べてくれる
- 保存料が使われていない
デメリット
- 栄養価が偏ってしまうことがある
人間と猫では必要な栄養やバランスが違います。
手作りに挑戦する際には、今までで学んできた栄養素やバランスを考えることで、猫にあった栄養を摂取できます。
キャットフードの選び方のコツを紹介
選び方のコツとしては大きく分けて2つあります。
①猫にとっていいものを選ぶ
②猫にとって悪いものを避ける
シンプルですが、非常に大事な考え方です。よりよいキャットフードの選択ができるようにしましょう。
① 何よりも猫にとっていいことを考える
猫の食事を決める上で、まず「栄養バランス」が大切です。
もちろん猫の個体や生活環境、ライフステージよって好みの食事は変わってきます。
「ドライフードをずっとあげてきたけど最近食いつきが悪い」
「今あげているフードは本当に体にいいものなのか」
このように考えている方は、是非とも一度手作りフードを試してみてはいかがでしょうか?
手作り食は、飼い主さんが正しい知識をもつことで、栄養バランスのとれたごはんになります。
さらにそれ以上のメリットがあります。
それは何よりも「猫ちゃんが喜んでくれる」ことにつきます。
愛情を込めて作ったフードを、嬉しそうに食べている猫ちゃんを想像してみてください。
猫も動物です。飼い主の愛情はしっかり受け止めてくれます。
「自分は飼い主に愛されている」と実感できるほど、猫にとって喜ばしいことはないのではないでしょうか。
普段使用しているフードに加え、少しずつ手作りも交えて与えることでよりより関係性を築くことができます。
② やってはいけないことを理解しておく
「猫にとっていいこと」を考えることはもちろん、「やってはいけないこと」を理解しておくことも非常に重要です。
フード選びは、たくさんの種類があることから、悩まれる飼い主さんもとても多いはずです。
だからこそ、「いいもの」だけを考えるのではなく、「やってはいけないこと」を頭に入れておくことで、選ぶ際により良いものを見抜くヒントになります。
キャットフードの選び方でやってはいけないことは大きく分けて3つあります。
1.価格だけで選ぶ
2.食いつきだけで選ぶ
3.総合栄養食ではないものを選ぶ
最低限、この3つの「やってはいけないこと」を理解しておきましょう。
1.価格だけで選ぶ
「安いから」という理由でキャットフードを選ぶのはやめましょう。
安い製品は基本的に原材料でコストカットをしているため、健康への配慮がおろそかになっていることが考えられます。
このコストカットのために、不要な着色料や保存料が使われており、これらは長期的には猫の健康にとって悪い影響を与える可能性も否定できません。
「安かろう悪かろう」で決めつけてしまうことは難しいですが、良質な原材料を使おうとすれば価格はそれに応じて上がるもの。
キャットフードは猫の一生を左右するものだけに、良質なものを与えてあげることが望ましいです。
もしフード選びに迷ったら、「中・高価格帯」のものを選ぶことが無難です。
各製品の栄養バランス等が気になる場合には、この記事で説明した栄養学の基礎を身につけ、自らが良いと思えるフードを探してみましょう。
2.食いつきだけで選ぶ
「ただ食いつきがいい」だけのフードは、何かしらの理由があります。
そこには食いつきをあげるためだけに別途動物性の油を吹きかけていたり、どうにかして嗜好性を高めようとする施策が多く施されています。
それが悪いことではありませんが、人工的な味付けは必ずしもいいいものであるとは言えないでしょう。
また、「○○仕立て」や「○○味」と記載のあるものは買わないようにしましょう。
これらの記載のあるものは、例えば「チキン味」とある場合には鶏肉でできているように思いがちですが、実際に使われている量は5%以下となっています。
ペットフードのラベルや記載に関する規制である「ペットフードの表示に関する公正競争規約」では、「原材料名を商品名に含めたりパッケージに記載する場合、その原材料が5%以上使用されていなくてはならない」と定められています。
肉や魚の含有量が多いフードを食べさせたい場合には、「チキン」など原材料のみ表示されているものを選びましょう。
3.総合栄養食ではないものを主食に選ぶ
「猫ちゃんが喜んでくれるから…」といって、おやつばかりを与えていませんか?
おやつは分類としては「一般食(その他の目的食、副食)」に分類されており、嗜好性が高い傾向があります。
しかし、猫に必要な栄養素を満たしていないため、総合栄養食と一緒に与える必要があります。
当然、おやつのカロリー分、主食の総合栄養食を減らす必要があります。
総合栄養食は適切な量を与えることで、必要な栄養素が満たされるように設計されています。
日常的におやつを与えると、栄養不足を引き起こしかねません。
もし食いつきをよくしたいのであれば、ウェットタイプのフードや手作りフードの総合栄養食を与えるのが無難です。
まとめ
人間とは違う猫の栄養学に基づき、猫にとって良いフードの選び方までお話してきました。
・総合栄養食に準拠したフードを選ぶ
・猫のライフステージにあった食事を与える
・選び方を間違えると病気や生活習慣病にかかるリスクがある
・価格や食いつきだけで選ばない
大切な家族である猫の寿命の約8割がキャットフードで決まると言われるほど、キャットフード選びは重要です。
キャットフードのおすすめランキングなどに左右されずに、この記事で正しい知識を身につけ、猫ちゃんにとって本当に良いキャットフード選びの参考になれば幸いです。